FTMが受ける乳房切除術の全貌

こんにちは!

『FTMつよしくんの気になる言葉を考えるよ』ブログにお越しくださいましてありがとうございます!

今回は乳房切除手術について書いていこうと思います。



  • 乳房切除手術とは
  • 手術までの道のり
  • 手術費用
  • まとめ

乳房切除手術とは

簡単に言うと、おっぱいを取っ払う手術ですということなのですが(笑)

一般的には『胸オペ』という風に言われている外科的治療です。

おっぱいを切り開いて乳腺を摘出し、必要であれば皮下脂肪を吸引することで男性のような平らな胸に戻してあげる、ということを行う手術ですね。

やはりおっぱいというのは重要な女性の象徴の一つですので、おっぱいについての苦悩はFTMであれば誰でも必ず通ると言っても過言じゃないとぼくは思っています。

ぼくは『とにかくホルモン注射と胸オペ!』が合言葉みたくなっていましたね。

当たり前ですが、一度手術をしたら元には戻せないので原則的には20歳以上の方が受けられるとされていたのですが、ぼくが最近読んだガイドラインによると、18歳以上で身体的治療が行えると診断してもらえれば手術を受けることが可能になっているようです

ただし、未成年の方は親権者などの法定代理人の同意を得なければならないということです。

ちなみにぼくは23歳の時にこの胸オペを受けています。

今でも忘れない、3月3日、女の子の節句の日に重たい(実際はめちゃ小さかったw)荷物を神様にお返し致しました(笑)

主な術式

ぼくが実際に受けた手術の術式ともう一つくらいしかわからないのですが、色々調べたところ大きく分けたらこの二つだと言っても大丈夫そうだったので簡単に説明したいと思います。

ちなみにこういったトランスジェンダーの外科的手術は日本国内でやる人と、かの有名なタイのヤンヒーという病院でやる人とがいます。

ぼくは日本国内でやりました。

母が心配したからというのもあったのですが、タイに行くほどの日程は取れない状況だったので。

乳腺摘出術

言葉だけじゃ伝わらないかなと思ったので、実際のぼくの胸の写真と共に説明いたします。

赤いラインが切除する部分だと思ってください。

この術式は、画像のように乳輪の外周に沿って半周分切って中身を摘出するというものです。

この術式のメリットは何と言っても傷跡が小さく済む!ということでしょう。切る幅が小さければ傷跡も目立たないし、何より身体への負担も抑えられますからね。

ですが、この術式は比較的小さな胸の方向けです。

何故かというと、一度膨らませた風船の空気を抜くとしわしわの風船になりますよね?あれと同じです。

この術式は、いったん切り開いて中身だけ抜いて閉じるので、大きな胸の方がやると皮膚のたるみや左右の乳首の位置がずれるなど見た目に影響が出てしまうんですね。

ちなみに、ぼくは本当に小さな胸だったのとナベシャツ(平らに見せるために胸をきつく押しつぶすためのアンダーシャツ)を一度も着たことがなかった為、この術式で問題ないという判断をしてもらい手術をしてます。

ぼくの場合は、乳輪を横に真っ二つに切ってそこから摘出して閉じているのでU字ではないのですが、術式としてはこの乳腺摘出術になります。

こんな感じ

ちなみにぼくは中身を摘出した後、数か月後に乳輪と乳頭を小さくする手直し手術みたいなものを受けました。最初から手術プランにそれが入っていたのでみんなやるもんだと思っていたんですけど、どうやらそれは病院によるみたいですね。

その時の話はまた次の機会にすることにしましょう。

乳房切除+乳輪乳頭移植

もう一つがこちらの乳腺の摘出と余剰皮膚の切除を一緒にやる方法です。

こういうことですね。

余ってしまう分の皮膚を切除するので乳輪と乳頭をずらさなければならないのでこうなります。

どちらの術式でも同じリスクはありますが、移植した乳輪や乳頭が壊死してしまうこともあります。

また、画像を見てもらうとわかる通り傷跡が大きいので個人差もありますが、傷が目立ってしまう方もいるようです。

めっちゃ他人事みたいに聞こえるかもしれないのですが、ぼく個人的にはこの傷カッコよくていいなぁって思うんですけどね。

アイデンティティの為に戦った傷跡って感じで。めっちゃ厨二w

手術までの道のり

では、どうやったらこの手術が受けられるのか、という話ですよね。

以下に、性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン(第4版改)から引用した条件の部分を載せておきます。

  1. 身体的治療に移行するための条件を満たしていること(1)
  2. 身体的条件:十分な問診、身体的診察と必要な検査を行い、乳房切除術を行うことによって健康に重篤な明らかな悪影響を及ぼすような疾患が否定されていること。(例えば麻酔薬に対するアレルギーや重度の肝障害等)
  3. インフォームド・デシジョン:乳房切除術の方法、効果と限界、起こりうる副作用について改めて十分な説明を行い、理解していることを確認したうえで、文書で同意を得ること。
  4. 家族・パートナーへの説明:家族、パートナーにも必要に応じ、乳房切除術の具体的術式、予想される結果、手術上のリスクについて十分な説明を行うこと。
  5. 年齢:年齢は18歳以上であること。18歳以上の未成年については親権者など法定代理人の同意を得ること(親権者が2名の場合は2名の同意)
  6. 既に、2通の意見書をもとに医療チームの検討を経てホルモン療法に移行している者が乳房切除術を希望する場合には、改めて乳房切除術に関する意見書を少なくとも1名(1名だけの場合には精神科医)の意見書作成者から得て、医療チームにおいて検討し、手術適応であることを確認していること。
(1)身体的治療に移行するための条件とは、性別違和の持続、実生活経験の有無、身体的変化に伴って起こりうる困難に対応できる準備が整っているなど精神科領域においての準備が整っている状態であると判断できることが挙げられています
これは日本精神神経学会 性同一性障害に関する委員会が作っているもので、ホームページに行けば誰でも読めますので一度読んでるといいかもしれないですね。なかなか面白いです(笑)
難しく書かれているんですけど、要は手術しても精神的身体的に健康で、手術においてのメリットとデメリットを十分理解したうえで了承してくださいね、ということですよね。
このガイドラインは当事者を縛るのではなく、医療者がきちんと当事者を守れるようにガイドしてくれているものなので、そういうことをちゃんと当事者に説明したり検査したりしてね!ということです。簡単に言うと。

ぼくが受けた説明

ぼくが先生に説明を受けたときには、『ぼくは神様じゃないから、手術をしたところで君を男の身体にしてあげることはできないんです』と言われました。
『この手術は君を男の身体にする手術ではなく、女に見えない身体にする手術だと考えてください』と。

この説明はとても印象的で今でもよく覚えています。

乳頭の壊死の可能性も説明されたし、全身麻酔だからそれのリスクの説明も受けました。

わりと命がけなんですね、これ(笑)

それでも命かけたって手術ですべてが解決するわけではないし、ましてや失敗することもあります。

成功したってそれで終わりではなくて、身体が変わることで社会生活に影響だって出ます。

例えば、ぼくは公衆浴場には行けません。上半身と下半身がちぐはぐですから。カミングアウトしていない友人に温泉や銭湯に行こうと誘われたらなんて答えますか?これって、別に行かないって言えば済むでしょって話じゃないんですよね。

それが社員旅行とか上司との出張だとか、もうなんかヘラヘラしてるだけじゃどうにもならない状況ってあるんですよ(笑)

この先生の『女に見えない身体にするだけです』という言葉ってぼくはすごく重くて重要だなと思っていて。

結局は、先生たちはぼくが男として生きる中で不自由になる要因を少しどかしてくれているだけなんですよね。

手術したから男として生きれるわけじゃなくて、ぼくが男でおっぱいはいらないから取ってくれただけ。っていう。

失敗もあるかもしれないし、ぼくの思った通りの身体にならないかもしれない。それでも今のままは嫌だから、協力してくださいという気持ちでぼくは手術を受けた記憶があります。

ぼくの胸を見て、『君本当に小さくてきれいなおっぱいだね~!』って笑ってて、ぼくはこの先生やっぱ好きだわと思いましたね(笑)

おっぱい専門の先生が本当に小さいって言うんだから本当に小さかったんでしょう(笑)

ホルモン療法と乳房切除術の関係

どちらも身体的治療の領域ですが、どちらが先とか後とかどっちもやらなければならないとか、全くそういう決まりはないです。

当事者本人の意向次第です。健康状態とかはもちろん見られるけど。

ぼくはホルモン療法を始めてから半年後くらいに、主治医の先生に『そろそろおっぱい取りたいな~』みたいな感じで言ったら病院を紹介してもらえて、予約して先生に会いに行ってみたという感じでした(気軽すぎるw)

そこで先ほど書いたような説明やお話を聞いて、お金の話もしてもらって、その上でやるかどうするか決めるという感じでしたね。

ぼくはカミングアウトした時に両親にもとにかくホルモン治療と胸オペ!と宣言していたので、初めて病院に行く前に改めて話して、承諾をもらって行ったのであとは説明聞いて自分がどう思うかだけだなという状況でした。

術式聞いて怖くなったりとかするのかな?と思ってたんですけど、怖さよりもずっと思い描いてきた理想の自分になれるんじゃないかという期待が勝ってワクワクしっぱなしだったのを覚えています。

先生が言うように手術は万能ではないんだけど、でもやっぱり自分の力だけでは打てない最後の一手までやっと来れたんだという、いわば勝利への確信みたいなもので体中がみなぎったような興奮がありましたね。

母には、怖くないのか何度も聞かれたけど、ぼくは何も怖くなかったです。

きっと母は万が一死ぬことだってあると思ってたんだと思います。

ぼくはと言うと、確かに死ぬかもしれないけど、死ぬ気がしないというか成功する気しかしねぇなって思ってたんですよね(笑)

正直、死ぬにしても麻酔で寝てる間に逝くんだろうししゃーないかなって。痛くないならおっけー!って思ってました(笑)

手術自体の詳細なレポートはまた詳しく書きますが

手術当日は一泊して帰ります。

帰って、ぼくの傷を見た母は自分が泣いても仕方ないんだからと言いながら泣いていて、この人より先に死ぬのだけはやめると決めました。ぼくの幸せが父や母の幸せなんだと信じています。

しかし正直ぼくもさすがに自分の身体に縫った後と糸がグサグサ入っているのは引きました(笑)



手術費用

気になるお値段ですが…(笑)

調べたら出てきますが、乳房切除術ですと国内では平均60万~120万円ちょっとくらいのようです。

タイでやる場合の方がお値段は安いみたいですね。交通費含めても全然安い。ぼくが調べた時ですべて込みで40万円くらいでした。さすがヤンヒー

60万~120万の幅は、術式によるところが大きいみたいです。

ぼくは、先ほども少し言いましたが、乳腺摘出術を行った後、数か月通院して様子を見てもらって半年か一年後くらいに乳輪と乳頭を小さくする手術を受けました。

一回目の術後の通院は、3日ごとに2回くらい行ってその後は一週間に1回の通院が1か月くらい…、その後は1か月に一度とか3か月に1度の通院を1年半とか2年くらいしてた気がします。

わりと丁寧に見てもらってましたね。

初めて病院に行ってから手術すると決めて予定日を予約して手術当日になるまでは4~5回くらいは通院したと思います。スキップしながら通院してましたね(笑)

手術日を決めて予約してお金を支払ってから全てが終わるまでの費用は予後の通院も含めて、最初に支払った手術費の中に含まれていたようでその後は一切お金は払わなかったです。

で、ぼくの胸はいくらかかったかと言いますと、すべて含めて70万円ほどでした。

小さかったからね(笑)

まとめ

胸オペについていかがでしたでしょうか?

少々長くなってしまいましたが、ぼくの経験談も含めて参考になればいいなぁと思います。

外科的手術はどんな病気の場合もリスクが大きいです。

だからこそ期待できる効果も大きいわけですが、やっぱり大事なのはいつでも主体なのは当事者である自分なのだということだと思います。

誰かに決められた性別じゃなく、自分の魂が叫ぶ本当の自分で生きるとはつまりそういうことですよね。

自分で決めなきゃ何も変わりませんから。

周りが何をしてくれるのかじゃなくて、自分が何をするのか。どうやって生きていくのか。世の中の大学生は就職活動じゃなくて、先にこれを考えた方がぼくは良いんじゃないかと思います(笑)

それでは今回はここまで!

最後までお付き合いありがとうございます!

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